①荒川の水資源
荒川の水資源をどう活用していくかを考える上で、将来的な水量の予測を立てることは非常に重要です。
降水量変化や渇水の可能性など、荒川の流量の変化を予測します。

気候変動に伴う荒川流域の降水量変化は?

降水量の変化は、河川流量をはじめとする表流水の量や質に多大な影響を及ぼします。荒川流域でも、降水量は季節によって変化するのはもちろん、年々その量に変化があります。では、将来的な気候変動に伴って、流域における降水量はどのように変化していくのでしょうか。その予測のため、「気候モデルによる温暖化実験の結果」、「疑似温暖化手法」、「領域気象モデルによる力学的ダウンスケーリング」を用いて検討しました(5つの気候モデル/ C N R M -CM5、GFDL-CM3、MRI-CGCM3、GISS-E2-R、MIROC5による温暖化実験結果を使用し、温暖化シナリオとして、RCP4.5を使用)。その結果、使用する気候モデル(GCM)によって将来の降水量予測は大きく異なりました。しかし、多くの気候モデルで、荒川流域での年間降水量の標準偏差は拡大することが予測され、降水量が極端に多い年、極端に少ない年、というように、年ごとに変動の幅が大きくなることを想定する必要があります。(流域水資源グループ)
将来気候と現在気候における平均年降水量の差(mm)
▲将来気候と現在気候における平均年降水量の差(mm)
現在気候と将来気候での平均年降水量の差を表したもの。赤は減少、青は増加を示す。将来気候のダウンスケーリングに使用する5つの気候モデル(GCM)によって結果は大きく異なることがわかる
将来における年降水量の年々変動の変化
▲将来における年降水量の年々変動の変化
多くの気候モデルにおいて荒川流域での年降水量の標準偏差が拡大するという予測に。年々変動の幅が拡大され、極端に降水量が多い年、少ない年が発生する可能性が示唆される

将来、荒川での渇水は起こりやすくなるか?

安定した水道水源の確保を考える上で、渇水の起こる頻度や規模(程度)が将来どのようになるのかを知ることは非常に重要です。そこで、前項目でも用いた、「気候モデルによる温暖化実験結果+疑似温暖化手法+領域気象モデルによる力学的ダウンスケーリング」によって得られた結果を「渇水」という視点で見てみましょう。
年降水量が現在気候の平均年降水量の75%を下回る年(回)がどれだけ出てくるかを予測したところ、現在気候に比べて「降雨量が少なくなる年の頻度」は高くなると予測されました。また、現在は年降水量が平均年降水量の75%を下回ることのない地域でも、将来においては75%を下回る可能性があるという結果が出ています。特に水不足が問題となる夏季には、土壌の乾燥や貯水量の低下が懸念されます。(流域水資源グループ)
荒川流域周辺での少雨年の発生頻度
▲荒川流域周辺での少雨年の発生頻度
現在気候と、5パターンの将来気候モデルとをそれぞれ比較。黄色→赤色の地域ほど、少雨年の発生頻度が高くなると予測される
対象とした11年間での夏季最小積算降水量比の最小値の分布
▲対象とした11年間での夏季最小積算降水量比の最小値の分布
用いた気候モデルの中では、GISS-E2-R、MIROC5で顕著に少ない時期が見られる。年初から夏までの積算降水量が少ない場合には、現在よりもその程度が激しくなる(降水量が少なくなる)

2060年、荒川の流量はどうなる?

降水量の変化に伴って、荒川の河川流量はどのように変化していくのでしょう。流域内の降雨分布や地形・地質などの不均一性を考慮できる「分布型水文モデル」に前述の降水量の将来予測結果を与えることにより、2060~2070年頃の河川流量がどのようになるのかを予測してみました。
2000〜2010年の現在気候との比較では、降水量の変化と同様に、気候モデル(GCM)により、流量の増加/減少傾向は異なります。しかし洪水流量に着目して、その最大値を見てみると、増加しているケースが多く見られます。将来気候においては、洪水規模が増大する可能性があると予測されます。(流域水資源グループ)
現在気候/将来気候のもとでの流況曲線
▲現在気候/将来気候のもとでの流況曲線
※時間単位流量/秋ヶ瀬取水堰地点
日々の流量を降順:大→小の順に並べかえてグラフ化したもの。降水量の変化と同様に、気候モデルによって結果が大きく異なる
洪水(年間上位3位平均)流量の変化
▲洪水(年間上位3位平均)流量の変化
※時間単位流量/秋ヶ瀬取水堰地点
各年上位3位までの流量の平均値を示したもの。グラフ中の箱型(色が塗ってある部分)、線の大きさ・長さは、その値の年々変動の大きさを示す。中央値を見ると、現在気候と比較して増加/減少のどちらの傾向もみられるが、最大値では増加しているケースが多くみられる
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