①表流水・雨水の利用
様々な水資源を具体的にどう利用していくかをデザインするために、各種水資源の水質や水量を知ることが大切です。荒川の表流水はもちろん、都市部に降る雨の活かし方も考えます。

将来の荒川の水質は水道水源として大丈夫か?

気候変動に伴う降水量の変化は、河川の水量だけでなく水質にも影響を与えます。そこで、水道水源としての適性(使いやすさ)を考える上で一つの基準となる「水の濁り」が、荒川ではどのように変化するかを調査・予測しました。「生活環境の保全に関する環境基準」に照らし合わせ、水道水源としての適性別(浮遊物質濃度SSが25mg/Lを超える/超えない)に水量の変化について検討した結果、現在気候と比較して、秋ヶ瀬取水堰地点においては温暖化時には高濃度SS(懸濁物質、浮遊物質)が発生する継続日数が増えるケースが見られることが推測されます。
また、年総流出量は適用する将来気候モデルによって増えるケースと減るケースが見られましたが、水道水に適した河川水量については、5つの将来気候モデルのうち1つのケースを除き、減少傾向を示しました。これは、年総流出量が増えたとしても、必ずしも水道水源に適した水が増えるわけではないことを示しています。(流域水資源グループ)
高濃度SS発生頻度の変化
▲高濃度SS発生頻度の変化
※秋ヶ瀬取水堰地点
青の棒グラフが現在気候での発生頻度を表す。それと比較して、温暖化時(他の色の棒グラフ)で高濃度SS継続日数の大きいケースが見られる
SS濃度別の年流出量
▲SS濃度別の年流出量
※秋ヶ瀬取水堰地点
年総流出量(緑の棒グラフ)については、温暖化実験(使用する気候モデル)によって増えるケース/減るケースが見られる。一方、SS濃度が低く水道利用に適した河川水量(水色の棒グラフ)は、CNRMのケースを除き、5~20%の減少傾向を示している

都市に降る雨の活かし方は?

極端に市街化の進んだ東京において、100mm/hの豪雨が1時間降った場合、建築敷地からの雨水流出量の占める割合は全体の約6割、道路では約2割となります。そうした雨水をただ排除するのではなく、水資源の有効利用、地下水涵養、水害軽減及びヒートアイランド現象の緩和という観点から、都市の水循環系の健全化を考えるべきです。現在、グーグルマップを利用し、雨水・再生水利用施設等データマップなどを掲載、雨水利用の状況を紹介しています。(都市雨水管理・利用グループ)
都市での雨水利用イメージ
▲都市での雨水利用イメージ
貯留浸透利用施設に貯められた雨水は、緑化散水やトイレ洗浄水など、様々な用途が考えられる
市街化と保水力・緑被率のバランス
▲市街化と保水力・緑被率のバランス
市街化が進めば雨水の表面流出は増大するが、浸透施設、貯留施設を設置することで自然状態に近づけることは可能
グーグルマップを利用した雨水・再生水利用施設等データマップ
▲グーグルマップを利用した雨水・再生水利用施設等データマップ
グーグルマップを利用して、雨水・再生水利用施設や再生水供給施設の位置をアイコンで表示している。IDとパスワード登録により、自由に閲覧やデータ入力・更新が可能(http://usui.strata.jp/rainwatermap/

雨水の水質は?

雨水は腐りません。それは、もともと雑菌や不純物をほとんど含んでいないからです。雨はもともと、海や湖、池、沼、地表などから蒸発した水分であり、それが雲となって、雨や雪を降らせます。従って、雨の成分は蒸留水と同じ なのです。雨は、通過する大気、屋根、貯める水槽などの汚れがどの程度あるかによって、水質が変わります。それらの汚れがほとんどなければ、良好な水質を維持することができるのです。屋根雨水については、初期雨水カット(雨量の定率カット)を行うことにより、濁度は2度未満に、色度及びTOC(全有機炭素)は、水道水質基準に概ね適合できるまで維持することが可能です。
また、一般細菌数はTOCが小さく滞留時間が長いと菌数が少なくなる傾向にあります。道路排水についても、初期雨水カット(定量カット:10mm/h)を行うことにより、貯留雨水の水質が維持でき、重金属濃度も問題の無い水質レベルでした。(都市雨水管理・利用グループ)
貯留雨水(屋根)の色度及びTOCと一般細菌数の分布
▲貯留雨水(屋根)の色度及びTOCと一般細菌数の分布
※2013年5月~2014年12月
円の大きさが一般細菌数を表している
道路排水の貯留水の水質モニタリング結果(2013年)
▲道路排水の貯留水の水質モニタリング結果(2013年)
濁度は降雨により一時的に上昇するが、初期雨水カット(定量カット:10mm/h)を行うことにより、貯留雨水の水質が維持できる。初期雨水カットによりECの濃縮は起こっていない
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