③地下水・雨水・再生水
都市圏の水利用を考えるにあたり、地下水、雨水、そして再生水をいかに活用していくかも重要なポイントです。水資源として安全に活用する上で必要な調査・研究を行いました。

水資源としての雨水の可能性は?将来の雨水利用のポテンシャルは?

貯留する規模を大きくすればするほど、またたくさん使うほど年間に利用できる雨水量は大きくなります。例えば、荒川流域では貯留高20mm、需要高4mm/日の場合、年間雨水利用率は約0.5であるのに対し、貯留高50mm、需要高9mm/日の場合は約0.7です(現在気候モデルJRA25の2000年~2010年の平均)。
荒川流域の住宅系・非住宅系の建物すべてに、それぞれ屋根面積に対し貯留高20mm、50mm規模の貯留槽を設置し、住宅系で屋根面積に対し1日に最大4.4mm(トイレ)、非住宅系で9.3mm(トイレ・散水)の雨水利用を行った場合、現在気候では1年間に貯留槽容量の約33杯分の雨水利用が可能。また、将来気候において悪いケースでも約28杯分の雨水利用が可能であるという予測が立ちます。※現在気候モデルJRA25より再現した2000年~2010年の少雨年、将来気候5モデルより再現した2060年~2070年の少雨年を対象として試算(都市雨水管理・利用グループ)
雨水利用率の試算
▲雨水利用率の試算
流域の住宅系、非住宅系含むすべての建物では、雨水の貯留高や需要高が増えれば雨水利用率も増える

地下水はどこから来るのか?

地下水の持続的な利用のためには、地下水の起源(雨水か河川水か、どの地域から涵養されているか)や平均滞留時間(地表から浸透して井戸に到達するまでの時間)の把握が重要です。そこで、地下水の水分子を構成する酸素・水素原子の安定同位体を利用し、周辺地域の雨や地表水と比較することで、地下水の主要な涵養源や涵養域を調べました。その結果、荒川中流域の地下水の主な起源は、周辺の台地上に降る雨や、20~50mで20~50年程度、地下入間台地上を流れる河川に由来するものであることがわかりました。
また、地下水中に含まれる放射性同位体や、フロン類などの化学物質の濃度を把握することにより、平均的な滞留時間を概算しました。その結果、荒川周辺の地下水の平均的な滞留時間は、地下150m付近で50~70年以上と推測されます。長期に渡る地下水揚水によって地下水の流れが変化し、滞留時間の短い=若い地下水(数年~10年程度)と、滞留時間の長い=古い地下水(数十年以上)が地下で混合されるようになってきたと考えられます。(都市地下水利用・管理グループ)
荒川中流域の地下水涵養・流動機構の模式図
▲荒川中流域の地下水涵養・流動機構の模式図
水道用水・工業用水は、水質・水温がより安定している深い帯水層からの取水が望ましい。ただし基本的に、地下深部の地下水ほど滞留時間が長くなるので、開発深度を拡大させることは好ましくない

地下水の汚染を「見える化」するには?

地下水の汚染状況を明らかにし、汚染源(自然の地層から由来する汚染か、人間活動に由来する汚染か)を推定するために、調査の結果を地理情報システム(GIS)により示し、「見える化」することを目指しました。
地下水の汚染の状況は地表からはわからないため、埼玉県内の荒川中流域にある複数の地下水観測井戸や使用中の井戸から採水し、自然の地質による汚染と、人間活動による汚染の両方が考えられる汚染物質として、臭化物イオン(Br)を対象に地下水の水質をまた、再生水は気候変動の影響を受けにくいため、量的にも安定的な供給が見込るという利点もあります。調和型の水利用を考える上で欠かせない選択肢のひとつです。(水質評価グループ)調査しました。
自然由来(海水由来)のBrは、同時に分析したClとの濃度の比が一定であるため、人為的な汚染との区別が可能です。人為的な汚染が疑われた場合は、地下の地層や、地表の土地利用の状況、都市、工場など人間活動の状況を調べてその結果をGIS上に表示することにより、汚染源が見えてきます。これにより、Br濃度が高く、水利用に留意が必要な地域や、適切な水処理が必要な地域を一目で把握できるようになります。(都市地下水管理・利用グループ)
荒川流域の地下水中の臭化物(Br)イオン濃度の分布
▲荒川流域の地下水中の臭化物(Br)イオン濃度の分布
赤い部分が高濃度のBr。埼玉県南部、北東部、北部に高濃度のBrを含む地下水が分布

下水処理水も水資源?

下水処理水は、用途を選べば高度処理して再生水として利用できる水資源になり得ます。しかし、現在の下水処理水の再利用率は全国平均でわずか2%足らずと、まだまだ利用は進んでいないのが現状です。
現在、さいたま新都心のビル群のトイレでは、洗浄水に下水処理水を再生水として使用しています。都心では、水を遠く離れたところから引いてくるよりも、都市の中にある水資源として再生水を使用する方がはるかに効率的です。また、再生水は気候変動の影響を受けにくいため、量的にも安定的な供給が見込るという利点もあります。調和型の水利用を考える上で欠かせない選択肢のひとつです。(水質評価グループ)
さいたま新都心では、トイレ洗浄用水に再生水が導入されている

さいたま新都心では、トイレ洗浄用水に再生水が導入されている

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